箱根駅伝2024:青学優勝に学ぶ成功の要素

今年の三が日は、元日のニューイヤー駅伝に加え、2/3日の箱根駅伝と、どちらも見ごたえがあるものだった。特に、箱根駅伝は第100回大会という節目の年に、駒大が優勝するだろうと言われていた下馬評を覆し、大会新記録で青山学院大学が優勝したことに世間は驚いている。

そもそも、青学は、個々の選手の記録では駒大に劣っており、さらに、12月上旬ごろにはインフルエンザの集団感染があり、今期は絶望的だったと言われていた。原監督は、大会終了後のコメントでは次のように述べている。

負けてたまるか大作戦を掲げていましたが、11月中旬から12月前半までインフルエンザもあって優勝なんてできっこないという状況でした。ただ、原メソッドという基本軸があるからこそ、アクシデントがあってもトレーニングには柔軟に対応できました。その結果として大会新での優勝につながったと想います。応援くださったみなさんありがとうございました。


12月28日の全体ミーティングでは本音8割、2割はホッとさせて奮起を促すかたちで、『準優勝でいいよ』と伝えました。その後、志貴勇斗キャプテン中心に学生だけで議論があったようです。内容はわかりませんが、最後まであきらめなかったというところにつながったのでしょう。

https://www.rikujyokyogi.co.jp/archives/125831

指揮官が優勝ではなくて良い、という宣言をした、ということだから、よっぽど駒大との差を感じていたのであろう。では、なぜ勝てたのか。メディアでは原監督の手腕に注目されがちだ。他の大会での結果よりも、箱根優勝に「選択と集中」し、個々の能力が低くても環境に合わせてチームの総合力を高めたなど、様々な考察がされている。

しかし、私は、志貴キャプテンの存在が、メディアで言われている以上に大きかったのではないかと感じてならない。そこで、今回のケースを社内で活用したいと思い、私なりに感じたポイントを下記の通りまとめた。

使命

青学では、4年生がチームの主体となってまとめあげる慣習があるそうだが、当該4年生は、3年生のメンバーと比べて実績が弱く、箱根経験者も所属10人中2人しかいなかったとのこと。チーム発足時は「信頼していない」とまで言われたそうだ。

私が印象的だったのは、12月末に行われた記者会見での志貴キャプテンについて書かれた記事だった。

2年目で実際に走る前まで、箱根駅伝は「夢や目標の舞台だった」と言う。しかし4年目で、かつ主将となった今では「勝たなくちゃいけない場所、青学が一番輝いている場所」という認識に変化した。

https://4years.asahi.com/article/15092422

「ポジションが人材を創る」という言葉は、正にこの言葉に現れているであろう。夢や目標という自分の欲から、勝たなくてはいけないという所属する組織のミッションへの意識転換。チームの中で、自分が全うしなければいけない役割が何かを強く認識できている強い言葉だと思った。

劣等感

そもそも、志貴キャプテンも本来エースとしての実力があったにも関わらず、コンディション不足で登録選手から外れてしまった。「走ることで引っ張ることができない」とチームメンバーに謝ったということだが、これがまた、チーム全員の闘志に火をつけたことは間違いない。

前述した通り、4年生主体でチームをまとめ上げるのが青学本来の姿だが、志貴キャプテンは下級生もうまく巻き込みながらチームの運営をしてきたという。チームの一体感を高める、統率をするために、自分が何をすべきか、よく理解できていないと、このような行動はとれない。

そもそも、人間はそんなにデキタ存在ではない。“キャプテンは絶対的に強い人がなるべき”と、特に学生はそう思うだろう。私も部活動経験があるのでよくわかる。キャプテンは圧倒的に強い存在でいて欲しいし、強いからこそ尊敬され、チームを率いる力となる。一方、レギュラーメンバーにも入れないメンバーは、普通、そこで不貞腐れてしまうものだ。

しかし、現実の社会ではそうではない。会社運営をしていてよく感じることだ。営業成績が良く、仕事を創れる人は皆に尊敬されるし、会社内での発言力が高まることは事実だ。でも、その人が社長を務められるかというと、そうではない。会社には、色々な人がいる。バックオフィスの人が社内を守ってくれているからフロントオフィスの人は思いっきり攻めることができるし、カスタマーサポートの人がいるからエンジニアも攻めた開発をすることができる。それぞれに役割があるのだ。

志貴キャプテンは、学生ながら、「走る」こと以外に、自分なりの組織の牽引方法を見つけ、それを実践したのだろう。劣等感を劣等感のまま引きずらず、エネルギーに変えて組織の活力とした。この姿勢がきっと、各選手に伝播したことは容易に想像できる。

笑顔

年末に原監督が「準優勝で良いよ」と選手に伝えた後、選手だけで話し合ったという。その時、どんな会話が繰り広げられたのか。いずれTV番組の取材などで明らかになるだろうが、志貴キャプテンはどんな言葉で想いを選手に伝えたのだろうか。

印象的だったのは、9区での給水シーンで、終始笑顔で給水伴走しながら声掛けをしているところだ。志貴キャプテンの人柄を短い時間ながら感じられるシーンだった。精神的な支えであることが自分の役割だからこそ、鼓舞するのが自分の役目だと、心底思っていないとできない行為だ。

そもそも、”終始笑顔でいる””笑顔で応援し続ける”ということは、簡単なことでは無い。責任がある立場の人ならなおさらだ。少なくとも、今の私には出来ない。どんなにうまくいっていても不安な事項に目がいってしまうし、どちらかと言うといつもイライラしている。その日、とても嫌なことがあっても、心にとどめ、周りには明るく振る舞うように努めていても、やっぱり顔に出てしまう。

でも、中には終始明るく、太陽のように振る舞える人もいる。”天真爛漫”という言葉が当てはまるのかわからないが、責任は責任として受け止めつつも、それを感じさせないリーダー、そのように私も在りたい。

1日のニュースで暗いムードも、3日の箱根の劇的な青学優勝で明るくなった。今日が仕事始め。明るく楽しく、一日をスタートさせたい。