なぜ新年の目標は続かないのか。

毎年、年の初めに、フレッシュな気持ちで「今年は〇〇をやります!」と、新年の抱負を宣言する人も多いと思います。でも、たいていの人は、やり切れずに、途中で挫折しちゃうんですよね。

これってなぜなんでしょうか?

人によるじゃん、環境によるじゃん…など色々とあると思いますが、世界中の行動変容や習慣化の論文や著書を読んで理論を研究してみましたところ、実は、目標そのものの性質を理解していないからなのではないか、という考えに至りました。。その知識と経験を背景に、今回は「目標の内容」にフォーカスしながら、自分なりの考えに落とし込みまとめてみました。

いきなり結論を書きますが、目標が達成できない理由を「目標の内容」にフォーカスすると、次の3点に集約されるのではないかという考えに至りました。

1.目標の「性格」「難易度」を理解していない

2.目標の内容に応じた「アプローチが不適切」

3.ルーチンとプロジェクトを「組み合わせていない」

では、簡単に自分の考えを説明していきます。

1.目標の「性格」「難易度」を理解するとはどういうことか

Facebookで友人の投稿を見ていると色々なタイプがあるな~と思いますが、大きく目標の内容としては2つに分かれるのではないかと思いました。

1つ目は、具体的な数値目標やゴール地点を掲げるタイプ。

「来年の夏までに5キロ痩せる!」「中小企業診断士の資格をとる!」

というやつですね。もう1つは、習慣化を掲げるタイプ

「毎日ブログを書きます!」「週に3回筋トレします!」

というよう感じ。

また、目標を高く設定する人もいれば、低く設定する人もいますよね。余り国際経験無い印象の人が「TOEIC900点とります!」と高らかに宣言する人もいれば、着実に達成できる目標を宣言する人もいます。

ここから、目標の内容には「プロジェクトかルーチンか」という性格と、今の自分からどこまで遠いかという「難易度」という観点の2軸が存在することがわかります。

これを、4象限にして表現してみます。

「目標の高さ」とは、「今の自分の地点から見て、それが到達しやすいかどうか」ということです。例えば、英語学習で考えれば、現在TOEIC600点の人からすればTOEIC900点は難易度の高い目標になるかもしれませんが、TOEIC700点は難易度がそこまで難しくない目標になりますよね。

「ルーチンかプロジェクトか」の違いは、「期限があるものかどうか」、別の言葉で言えば「習慣化を目指すものか、ゴール地点があるものか」ということで考えます。「TOEIC900点」は試験の結果なので、「6月までに」というように期限を決めるプロジェクトして一般的には認識すべきもので、ルーチンの例としては「毎日60分英語学習する」というものがあります。

このように、目標を達成するためには、目標そのものの内容をまずは正確に把握し、理解することが重要なのではないかと思います。

2.目標の内容に応じて異なるアプローチが必要

目標の内容を正確に把握した後、大事なことは、モチベーションを維持するために適切なアプローチをとる、ということです。私の持論は、ルーチン目標を達成するアプローチとプロジェクト目標を達成するアプローチは異なるものであり、これを同じように考えてしまうと3日坊主症候群にかかってしまう、というものです。それぞれの目標別に考えていきます。

1)プロジェクト目標の場合

自分にとって、目標難易度が低いものを設定してしまうと、達成できてしまいそうになってしまい、モチベーションにとってはネガティブに働きやすいと考えられます。現在TOEIC600点の人が700点取るには、もしかしたらラッキーパンチで取れるかもしれない、たまたま得意な問題が出れば取れてしまうかもしれない、と考えてしまう。そうすると、英語学習のやる気が出にくいのではないでしょうか。

一方で、600点→900点に上げるためには、まぐれではとれないな~と思ったら、それまでに至る英語学習の内容を見直していくはずです。例えば英単語5000語覚えないと、とか、英文法500文覚えないと、とかですね。

そうなると、難易度が低い目標は、難易度が高い目標を得るための通過点として考えることができます。6月までに900点を獲りたいなら、「4月までに700点」というように、階段を設定できます。

プロジェクト目標の場合、効果的なアプローチには、自分の能力の限界を超えるようにストレッチさせる「GRIT=やり抜く力(意思の力)」だったり「コーチング」などがあげられます。目標を達成した先に見える世界を強く描いて、自分の内発的動機高めたり、自主性を高めたりするアプローチが有効です。ただ、この方法は精神的にはストレスになる場合も多く、長期間は続きませんです。プロジェクト目標の場合は、できるだけ短期で(もしくは短期になるようにブレイクダウンして)集中して達成するようなものが良いといえるでしょう。

2)ルーチン目標の場合

実は、1)プロジェクト目標の場合というようのは、受験勉強や試験文化のある日本人なら、感覚的に理解できるものです。一方で、ルーチン目標の場合はどうでしょうか。ルーチン目標の場合は、プロジェクト目標の場合とは真逆の発想で考えることが大事である、と私は考えます。

「毎日英語を60分勉強する」という難易度の高い目標と、「毎日3分勉強する」という難易度の低い目標を比べた時、この難易度設定の違いは時間の違いがあるように見えて、実は「継続すること」「習慣化すること」という要素が存在しています。ルーチン目標の場合は、この「継続すること」そのもにアプローチしないとうまくいかない、と私は考えます。

※だったら「月に1回3分勉強する」という目標に設定すればよいのでは?というご指摘はあると思うのですが、それではルーチンとは言えないため、ここでは省略します。

このルーチン目標は、「GRIT」のような自分の意思の力やストイックな姿勢は精神的にストレスを与え効果的ではありません。行動を変えてそれを続けるのですから、たとえ3分であっても、習慣づけることそれ自体は大変難しいものなのです。行動を変える最も効果的な方法は「自分の生命に及ぼすような危機意識を芽生えさせること」です。例えばコロナ感染を恐れて皆がマスクを常時するようになったのはわかりやすい例かと思います。あるいは健康診断で医者から生活習慣病リスクを診断されたら、食生活や行動を変えることでしょう。しかし、そこまで危機意識を芽生えることも少ないです。では、この場合はどうすればよいのでしょうか?

私は、ルーチン目標を達成する最も効果的なアプローチは、「習慣化づけることをあきらめ、既に習慣化しているところから置き換える」というのが良いのではないかと考えています。例えば毎日電車で15分かけてオフィスまで通勤しているなら、その通勤自体は習慣行為です。わざわざ英語学習のために電車に乗る人はいません。電車に乗って移動しなければいけないという環境を活用する。その習慣行為の中に英語学習を取り込む。例えばNetflixで字幕の映画を見るというようにする。できたら通勤時間だけではなく就寝前にも見るようにする、入浴中にも見るようにする…など、埋め込むシーンを習慣行為の中に増やしていくことが大事ではないでしょうか。つまり、ここで大事なポイントは「無理をしない」「効果を意識しすぎない」こと。3分で効果あるのかな?30分で単語を100個覚えないと!というように考えてしまうと、習慣化はできません。その発想はプロジェクト目標になります。通勤時間にNetflixを英語字幕で見た行為、それを続けている行為を、効果はともかく評価してあげることが大事です。ルーチン目標はプロジェクト目標と違い「身に着けること」「行動を変えること」がゴールなことをしっかり理解していきましょう(そしてこのポイントを理解していない人がとても多いように私は思います)。

3.ルーチンとプロジェクトを組み合わせる

ここまで読まれた方は、既に気づいているかもしれませんが、ルーチン目標とプロジェクト目標は相互依存関係にあると言えます。6月までにTOEIC900点を獲ることが目標ですが、そのために毎日英語を勉強する、というルーチン目標を掲げた方が効果的であろう、とは想像に及ぶものです。また、毎日英語を勉強しよう!というルーチン目標を掲げる人も、何のために?とゴール地点を意識する瞬間が必ず訪れます。そんな時に、プロジェクト目標を設定してあげれば、ルーチン目標の中身や時間にも変化が訪れるのではないでしょうか。

まとめ:新年の目標を達成するために

以上を次の通りまとめてみます。

1.目標の内容を「ルーチン目標かプロジェクト目標か」「目標の難易度」で区別する

2.目標の内容に応じた適切なアプローチをとる
プロジェクト目標:高い目標を掲げ、そこからブレイクダウンする

           自分の意思の力やコーチングを活用するのが効果的

  ルーチン目標  :既に習慣化されているものを活用する

           自分の意思の力に依存せず、環境を活用し自然に行うのが効果的

3.ルーチン目標とプロジェクト目標を組み合わせて効果を倍増させる

如何でしたでしょうか?

自分は、小さい時からずっと「どのようにしたら人は動くのか?」ということに関心を持っています。人間の行動変容について是非もっと深く知りたい!議論したい!という方がいらっしゃいましたら、是非アリストルの問い合わせ窓口から連絡して頂ければ嬉しいです。