ワークエンゲージメントを高めるとは、その人の存在意義を組織の中で作ってあげること

会社運営をしていく中で、人事の問題は常に私が抱える悩みの一つです。

最初は、働く環境について悩みました。就業規則はどうするべきか。リモートは認めたままにするのか。有給以外に休暇制度を整えるべきか。福利厚生はどうするか。オフィス家具はどうするか、などなど。創業当初は、そんなことに悩むことなく節約をしていましたが、今は、できるだけパフォーマンスを発揮するために、どのような働く環境を整えるべきなのかを真剣に考え、PDCAを繰り返しながら理想の働く環境を追求しています。その結果、社内外の皆さんには自慢できる労働環境はできているのではないかと自負しています。

次に、採用に悩みました。良い候補者はどこにいるのか、どうやって面接プロセスを組んで良い候補者を絞り出したらよいのか。辞退率を下げるにはどうしたらよいか。試行錯誤を繰り返しながら、アリストルでは、現在、大手企業に負けない選考プロセスを確立し、多面的に候補者の魅力を見定めることができています。

しかしながら、次に悩む課題として出てきたのが、オンボーディング(新入社員の入社から半年間の期間)の問題です。そして、今、赤裸々に話すのであれば、まだまだスムーズにできているとは言い難いのが現状です。アリストルは中途採用が多いため、必ず前職のカルチャーを引き継いできます。良くも悪くも、そこには当社とのギャップがあり、そこに戸惑う社員の皆さんが一定数いらっしゃいます。また、元々想定していた職種とマッチしない場合もあります。それは、当社が「意識を変え、行動を変え、未来を変える」というパーパスを掲げているため、採用する理由の多くに、職種を変えて、新しいことに挑戦したい!という意欲高い人材を積極的に採用していることもあります。

ここでつまずいてしまうと、せっかく転職してくれたのにも関わらず、働くモチベーションが下がってしまいます。また、弊社のカルチャーに馴染んで頂かないと、他の社員のモチベーションにも影響が出てきてしまいます。いわゆるワークエンゲージメントの低下です。入社して最初の3か月は、特に環境が変わったことで、本人の意識や行動も変わりやすい時期です。この時期にいかにフィットさせるかが人材マネジメントでは極めて重要と私は考えています。

実は、会社のお作法的な部分には、そんなに問題になることはありません。例えば、弊社では、下記のような一般的な企業には無い(であろう)ルールが幾つかあります。

  • 会議の単位は原則30分とすること
  • Slackの発信は24時間365日OK。通知マネジメントは受信者側が管理すること
  • フィードバックをストレートに行うこと

最初は、スピード感であったり、率直に言い合ったりしている文化について、驚く方も多いです。しかしながら、私が感じる印象としては、この観点で躓く人と言うのは、ゼロではありませんがほとんどいません。潜在的にみんな嫌だと思っていたことを削ぎ落したり、個人・会社の成長に向けて必要なことを取り入れているため、「早いな」「厳しいな」と思うことはあると思いますが、採用前に丁寧に説明していることと、入社初日に、そして定例会議などでも定期的にその重要性を伝えているため、少なくとも理解・共感はしてくれているものと思います。

問題になるのは、職種のアンマッチが起きた時です。特に、未経験職種に転じた場合です。元々、〇〇の仕事をしたい!と、自らが希望していた業務に就くことができた場合、とても最初はモチベーションが高いです。しかしながら、過去の投稿「好きか、得意か、意義があるかでも書いた通り、好きなことと、得意なことが重なる場合は良いのですが、やりたい!と思っていた仕事は、好きな業務とは異なる場合もあるし、不得意な業務かもしれません。もちろん、チャレンジ精神は大事なことです。大いに挑戦して欲しいし、今後も当社は未経験でのチャレンジする人材を大いに歓迎します。

しかしながら、それでも成果が出ない場合と言うケースは、採用でいかに良い候補者を絞っても残念ながら発生します。私はこのような事態に何度も直面しましたが、今は、当事者のメンバーと、しっかりと話し合いながら、次のように業務を進めるように心がけています。

  • 組織内における本人の得意領域は何か、強みは何かを徹底的に話し合うこと
  • 本人同意の元、得意業務に集中させ、組織内での存在意義を双方で見出してもらうこと

時に厳しい判断かもしれません。しかしながら、無理な業務を無理なまま放置をすると、組織全体が疲弊してしまい、個人にとっても、チームにとっても良くありません。何人もの人材と向き合う中で、私は、「真のワークエンゲージメントとは、組織における個の存在意義を確立させることである」と理解しました。

そして、これは、突き詰めると、新入社員だけではなく、全てのメンバーの皆さんに共通していく問題だと認識しています。長年働いてくれているメンバーには、違う業務の経験をしてもらう機会を作ることも会社の努めです。メンバーからマネジャーへの昇進でも同じです。違う業務に転属されると、これまでの強みが強みとしていきなかったりすることがあり、悩むことがあります。そのような中でも、人材を活かしていかないといけない。単純に、できた、できない、という結果論で切り捨てるのではなく、徹底した対話を通して、各々が悩みながらもやりがいを見つけることができる職場環境を今後も追求していきます。