マーケティングは本屋で学べ #1

よく、新入社員の方から「マーケティングを理解するには何の本を読めば良いですか?」と聞かれます。マーケティングを大学で勉強する人は、「コトラー」とか「MBAマーケティング」とか理論書を答える人も多いでしょう。でも、自分はきっぱりと「マーケティングは本を読むだけでは理解できない」と答えています。

なぜか?

マーケティングはWikipediaの定義によれば、文字通り「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ことであり、活きたビジネスの中にあるからです。ほとんどの人が、「3C」とか「4P」とか、フレームワークっぽいものを学んで「マーケティングを理解した」と思う人が多いのですが、マーケティングの実務とはかけ離れている印象を持ちます。

むしろ、「本屋に行ってなぜ本を買うのか、その行為自体を理解することがマーケティングである」と僕は言いたい。マーケティングを理解したいなら、滑稽かな、本屋に行って本を読むのではなく、本屋に行って「本屋や本を買う人を眺めてみる」のがマーケティングを理解する上でとっても実践的だと思います。特に、これからの時代ではすべての社会人にとって必須の素養となるWebマーケティングを理解する上で有意義な点、本質が本屋には詰まっていると思います。

今回、5日間の連続記事を通して、本屋というお店の空間を通して、いかに実践的なマーケティングを理解できるかをお伝えしていきたいと思います。弊社の新入社員で、全くかじったことの無い人向けのテーマです。名付けて「マーケティングは本屋で学べ」シリーズ。各界の内容は次の通りです。

#1 マーケティングを学ぶのに最適な場所は本屋である

#2本屋でターゲティングを学ぶ

#3 本屋でファネルを学ぶ

#4 本屋でコミュニケーションを学ぶ

#5 本屋でクリエイティブを学ぶ

経験者の方には、当たり前のことだと思いますが、このような感じでフレームワークを作っているケースも少ないと思うので、是非評論家の立場でご覧いただけると嬉しいです。

なぜ本屋が良いのか

身近にある商店を眺めて、商売の基本を学ぶ。これこそがマーケティングの近道である。これ自体には納得を持つ人も多いでしょう。ケーキ屋や八百屋、スーパーやショッピングモール、身近な商店と言っても色々ありますよね。なんでもいいじゃん?と思う方も多いかもしれませんが、私は徹底して「本屋」「本屋で本を買う人の行動を眺めること」を第一歩としてオススメします。なぜ八百屋やスーパーではなく、YoutubeでもTwitterでもなく本屋なのか?#1では、本屋がWebマーケティングを学ぶ場所として最適な理由をお伝えします。

本屋に行く行為 = 情報を探す行為

まず、本屋には、当たり前ですけど、色々な本が並んでいます。週刊誌もあれば、漫画もある。ビジネス書籍もあれば、健康関連本もある。要は、本屋は人々が欲しい情報が集積する情報の受け皿のような存在です。八百屋だと、どこへ行っても、どの季節でも、そこまで売っているものは変わり映えしませんが、本屋は場所やその時のタイミングで、売っている本がめまぐるしく変わります。だからこそ、本屋はその時のニーズやその場所のターゲットが見えやすい空間であると自分は考えます。

本屋にはなぜ行くでしょうか?本屋に行くときのシチュエーションを考えましょう。だいたい、3つの理由があるのではないかと思います。

①特定の本を買いに行くとき

②何となく欲しい情報があるとき

③暇つぶしのとき

①はとてもわかりやすいと思います。コトラーのマーケティング4.0を買って読もう!など、もう買う本が決まっていて訪れる場合。②は「Webマーケティングの勉強したいな。」と思ってWebマーケティングのコーナーに行き書籍を探す場合です。③は、例えば待ち合わせまでの隙間時間で、特に買う目的もないけれどふらっと本屋に立ち寄る場合です。一般的な方なら、①②③どのケースでも本屋に立ち寄ったことがあるのではないでしょうか。

①②③どのケースでも共通しているのは、本屋に行って本を探す行為というのは情報を探している行為である、ということです。③は情報を求めていない、と反論する人もいるでしょうが、例えばふらっと本屋に立ち寄ってみて週刊誌を眺めていれば、目的は時間つぶしですが、情報には接しているわけです。つまり、本屋というのは「情報が集まった空間」であり、本屋に立ち寄る行為というのは濃淡はあれ何かしらの「情報を探している行為」である、ということです。

本を探す ≒ ネットサーフィン

既にお気づきの方も多いと思いますが、PCやスマフォで検索したりウェブブラウザを閲覧している(この記事を読んでいるまさにこの瞬間)行為と、本屋に行く行為とは、情報を探すという点において非常に共通しています。どんな時にネットで情報を検索するでしょうか。

①特定の情報を探すとき

②なんとなくの目的は決まっているとき

③時間つぶしの時

本屋と同じように具体的なケースで考えましょう。①Netflixのマーケティングについて調べたい時は、「Netflix マーケティング」と検索しますよね。②何となくマーケティングのことを調べたい時は「マーケティング 手法」とかで、信頼性のあるウェブサイトを探すと思います。③時間つぶしの時は、検索サイトにアクセスするというよりもニュースサイトにアクセスしたり、掲示板サイトにアクセスしたりして、だらだらと情報を見たりしているのではないでしょうか。

Webマーケティング上で考えるべき3種類のユーザー層

これらの3種類の情報探索の行動パターンを、Webマーケティングとしては次の通り階層化して考えることができます。

①指名層、②関心層というのは能動的に行動している一方、③無関心層は特に目的もなく受動的に行動しているということがお分かりでしょうか。

本屋で言うなら「特定の本を探している人」と「暇つぶしで立ち寄りに来ている人」をしっかりと分けて考えないと、売る本も違ってくる、ということがお分かりいただけるでしょう。Netflixの本を探している人に、Appleの本は不要だし、マーケティングの本を探している人にファイナンスの本は不要です。

つまり、本屋に行って情報を探す行為そのものがデジタル化した行為がネットサーフィンなわけです。従って、ネットサーフィンをする人たちに対してマーケティングを行うことをWebマーケティングと捉えるなら、本屋に行く人たちや本屋の様子を理解することで、Webマーケティングのことも理解できるようになる、というのが私が主張する理論です。では、次回は、本屋を眺めながらターゲティングについて考えてみます。