「マーケティングは本屋で学べ!」シリーズですが、いよいよ今回で最後になりました。これまで、本屋という空間からスタートし、買うまでのフロー、そして本屋と本の関係について考えてきましたが、いよいよ最後は「本そのもの」に着目していきます。買う目的である「本」が、Webマーケティングの世界ではコンテンツに近しいということはお伝えしました。では、その「本」が買うまでに、どんな工夫をされているのか?を考えていきます。
良い本≠売れる本
本を読んで、次のように思ったことはないでしょうか?
「なんかこの本、期待外れだったな…」
「なんかこの本、最初の10ページで読むのやめちゃったな…」
せっかく1,000円~2,000円出して買ったのに、読まなかった経験。もしくは読んだけどネガティブな感情を持った経験。誰でもあると思います。これは「本を買うという購買行動と本を読むという行動の効用にずれが生じたため」です。
つまり、自分の求める内容を書いてくれた本=良い本と、本で売れていく本=売れる本は、必ずしも一致しない、ということです。もちろん、万人に愛される良書と言われるものは多いでしょう。でも、良書であることと、本が売れることは、全く別次元の話であるということを理解する必要があります。では、どんな本が売れるのでしょうか?
タイトルと著者でほぼ決まる
わかりやすく、ビジネス書籍の場合で考えてみます。AとBの本が並んでいた時、どちらの本を選んで買いますでしょうか?
A「超・マーケティング マーケ太郎」
B「1か月で身に着くマーケティング思考30 フィリップ・コトラー」
もちろん、Bですよね。なぜでしょうか?
まず、そもそもの前提として、本は縦置きで並んでいます。その時、目にするものは基本的に本のタイトルと著者名しかありません。棚の中で選ばれし本の中から、お客様に手に取ってもらわなければいけません。その中で、お客様が本を手にとる理由は、原則二つしかないと考えられます。
①中身がわかりやすいか
②自分が知っているか
中身がわかりやすいか、というのは、本を手に取るその瞬間に、その本の中身がわかりやすいものになっているか、読んだ先にどんなメリットがあるのかが明白か、と言うことです。Aのタイトルでは、「超・マーケティング」というタイトルからは、既存のマーケティングを超えた新しい何かなのかな?ということ以外よく伝わりません。一方、Bの方では「1か月で読み終えらることができる」「思考法が30書かれている」というように、内容がはっきりしています。
自分が知っているか、というのは、認知しているものがそこに描かれているか、という問題です。Aの著者マーケ太郎は誰やねん!となったら、まず説得力がありません。一方、(マーケティングの大御所である)コトラーを知っていれば、それは「あ、あのコトラーの本なのか」と手に取る理由になります。
このように、コンテンツの表現を考えることを、クリエイティブと呼ぶことにします。他にも、縦置きや横置き、popや帯など、手に取ってもらうための工夫はたくさんありますが、そこは応用編ということで、別の機会でお話することにします。
Webサイトのクリエイティブを考えてみる
「本をどうして手に取るのか?」という考え方は、「どうしてこの記事をクリックしたのか?」という考え方と非常に近しいということは、もうお分かりだと思います。webサイトで記事を書くとき、よく内容がわからないタイトル、書き手が誰?となるものでは、読まれにくいということです。例えばダイエットレシピの記事を書くなら、
A: 鈴木式バターブロッコリーを作ろう!
B: 有名管理栄養士〇〇さんオススメ!3分で作れる時短ダイエットメニュー『バターブロッコリー』!
どちらがクリックしたくなるでしょうか?答えはもう言わなくてもいいですよね。
知名度の作り方
①中身をわかりやすくする、という手法は、実際、差別化しにくいものです。ですから、本屋の書籍も、ターゲットが同じ場合、似たようなタイトルが結局並びます。その場合は、知名度勝負になりやすくなります(必ずしもそうでない場合も多いですが)。知名度なんてそんな簡単に伸びん!そう、簡単に伸びないからこそ知名度の価値があるのです。
Youtuberさんを考えてみましょう。たまたまあげた動画ひとつで成り上がる方というのはほぼいません。視聴者のことを考え、どんな企画にするべきか考え、タイトルやサムネイルを練りにねって出し、それを繰り返すことでファンを獲得しています。その結果、テレビ局が目をつけたりして、露出がさらに増え、更にファンが増える。増えたタイミングで、商品をプロデュースしたりすると、その商品は売れる、という構図です。
まとめ
以上、本屋でマーケティングを学べ!シリーズでした。主に、弊社の新入社員を想定し、最低限のマーケティング思考を身につけて欲しいと思い、書いてみました。まとめると、
①本屋で本を買う行動とネットサーフィンをする行動は似ている
②空間の限られた本屋では選択と集中、ターゲティングが求められる
③本屋に入ってから本を買うまでのフローにファネルが存在する
④本屋と本はメディアとコンテンツの関係があり、コミュニケーションである
⑤本はタイトルというクリエイティブが生命線
という感じですかね。 実際には、もっともっと色々な視点がありますが、シンプルにモデル化して、全五回にてお伝えしてみました。もっと深く知りたい!という方がいらっしゃいましたらお知らせいただけると嬉しいです。