「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」のバランス

皆さんは、今の仕事で、「あー、この業務はめんどくさいなあ。やりたくないなあ。」と思うことはありますか?きっと、誰しもありますよね。しかしながら、やりたくない仕事だったとしても、「これは私がやらないといけないことなんだよなあ。」と義務感で仕事を行うこともあるでしょう。そもそもですが、「これが私がやりたいことなんです!」とはっきり言える人も少ないことでしょう。

そんなことを考えてしまうと、「いま自分はこの職場にいるべきなんだろうか?」と悩んだりして転職を考えたりしますよね。転職を経験した方ならわかると思いますが、理想を追い求めた転職先で、あ、やっぱりやりたいことはできないんだ、、、と思うような経験をされた方も多いでしょう。

本日は、そこで、仕事において、「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」について、私がどのように考えているかをお伝えします。

昨年の年末ごろになりますが、関係各社への挨拶をしている時、株主の一人から「やりたいことをやれていますか?」と聞かれました。投資家は起業家のやりたいことをサポートすることが使命だから、やりたいことを貫けているか確認したい、という趣旨での発言でした。

しかし、私はその場で次のように応えました。

「自分は、やりたいとかやりたくないとか、そんな気持ちで経営に向き合ってはいません。代表取締役としてやるべきこと、ステークホルダーと約束した責任を全うするため毎日を過ごしています」

この考えが正しいとか、間違っているとか、そういうことではなく、今の自分の考えをそのまま表現しました。思えば、起業当初は、「やりたいことをやっている」状態に近かったです。自分が欲しいもの、作りたいものを作り、世の中に提示する。起業することには勇気がいりましたが、資金を得て作りたいものを作る、資金を使いたいように使う期間は、純粋に楽しかったです。しかしながら、私はこの考えは、身勝手な発想で、全く間違っていたと今は反省しています。

事実、作りたいものを作ったところで、一部のお客様しか捕まえることはできませんでした。顧客の声に耳を傾け、市場と向き合うと、自分が本来作りたいと思っていたものと、顧客が求めるものの乖離に直面します。この乖離が「やらなければいけないこと」に転化していくわけです。しかし、顧客の声を無視したところで、会社が存続するわけがありません。瞬く前に会社は窮地に追いやられました。

2020年4月、自分が会社を立て直す!と決めたその瞬間から、私は「自分がやりたい!と思うことをやる前に、自分にやって欲しい!と周囲の人が思ってくれることを100%やりきろう」と心に決めました。不思議なことに、この考えを突き通してから、周囲の方が助けてくれるようになりました。顧客がつき、売上が伸び、会社は再浮上し、創業6年目を迎えることができています。

ビジネスの考えからすれば、以上のような考えは至極当たり前の発想なのかもしれません。しかし、この当たり前の重要性に、私は会社の経営危機を通して初めて気づきを得ました。「利己を捨て、利他に徹する」という、現在のAristol Way の Altruismに通じる経営哲学をこの時確立しました。

利他に徹するのはつらくないですか?
義務感ばかりで楽しいですか?

と周りから良く言われます。自分の中には、「楽しい」とか「辛い」とか、そんな感情は殆どないです。毎日、生き残るために必死で、そんな感情はありません。

しかしながら。

例えば、お客様の声。メールでの感想や、プロジェクトが終わった後、お客様から「とても良いサービスで満足です。これからも宜しくお願いします。」と言われた時に感じます。「あ、私はこの瞬間を求めていたんだな。」と。つまり、顧客に認められた時に、自分の目の前の仕事がやりたいと思っていた仕事そのものだったんだなと気づきます。

顧客に認められた時。
従業員から感謝された時。
株主から評価された時。

私はそれだけで幸福であり、それを理解できた今、他人のことはどうでもよくなりました。

今は自分を囲んでくれる方々からの「ありがとう」の一言で十分です。

今日もその一言のために、誠心誠意尽くします。