金融界では象徴的な出来事が起きた。
11日の東京株式市場で日経平均株価は4日続伸し、節目の3万5000円を一時上回って推移した。日経平均が取引時間中に3万5000円台をつけるのは1990年2月22日以来、33年11カ月ぶり。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB110N50R10C24A1000000/
実に、30年以上ぶりに、日経平均は3万5000円を超えた。バブル崩壊後、失われた20年、30年とも言われた株価の低迷時代を抜け出した。一方で、アベノミクスと言われたここ10年の株価の伸びはまやかしでは無いかと言われ続けた。実際、Yahoo!ニュースのアンケートでは、今後下がると思っている人が過半数を占めており、決して楽観視している人が多くはない。
この事象をどう捉えたら良いのだろうか?私は、下記三点が大事な視点だと考えている。
- 海外投資家の動向
- 国内企業の動向
- 国内個人投資家の動向
それぞれ簡単に解説をしていこう。
海外投資家の動向
グローバルマネーの大半は、米国市場を中心に動いている。投資信託をやっている人の多くはS&P500など、米国のマクロ経済にかける人も多いだろう。
コロナ禍の不況で、米国は法外な助成金をばらまき、その結果としてインフレが起きた。米国のFRBは、インフレを抑制するため、度重なる利上げを行ったことで、株式よりも債権の方にマネーが移動した。しかし、昨月、FRBは利上げを見送り、2024年については利下げを行う見通しを発表している。
アメリカのFRB=連邦準備制度理事会は金融政策を決める会合を開き、13日、インフレが落ち着く傾向となっていることから3会合連続で利上げを見送りました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231214/k10014287591000.html
また、あわせて会合の参加者による政策金利の見通しが示され、来年・2024年は少なくとも年3回の利下げが想定される内容となりました。
利下げを行うといったものだから、債権から株式にマネーが呼び込まれるのは自然な流れだろう。グローバルな投資家は、世界の株式市場の中で、今後上昇が見込まれるマーケットを探したはずだ。
ではなぜ日本か?
国内企業の動向
それを紐解く鍵の一つは、国内企業の動向にあると思う。
一言でいうと、「自社株買い」が増えているのだ。
IRバンクのデータを見て頂ければわかるが、5-6年前は500社前後だった企業が、2022年、23年と1,000社、約2倍に増えている。
自社株買いの期待効果に株価上昇がある、というのは一般的な説明なのでここでは省くが、とにかく内部留保の多さを指摘されてきた国内企業が、しっかりと株式市場に対峙してきたのは良い傾向と言えるだろう。
尚、2023年は、トヨタ自動車で5,000億円、ドコモで3,000億円と、世界に誇る日本のリーディングカンパニーが大規模な自社株買いを実施した。
これが進んでいる背景には、日本の企業のPBRが1倍を割る企業も多く、株主還元策にもっと梃入れすべきだということを指摘され続け、東京証券取引所が旗振り役となって日本全体で取り組んだ効果と言われている。
まさに、国をあげ、”資本市場の中における企業のあるべき姿”に近づいた、各企業の努力の賜物が今回の株価と言える。
では、この動向は今後も続くのだろうか?
国内個人投資家の動向
私は、今後も株価が上昇し続けるかどうか、最大のキーは国内の個人投資家にあると思う。
世界は動いた。
国は動いた。
そして、企業も動いた。
最後、動くかどうかは、世界で誰よりもタンス貯金が好きな日本人が、投資活動を始めるかにかかっているだろう。
この一月から「新NISA」の制度がスタートした。キャピタルゲインの非課税枠が増えたことで、投資マネーを呼び込もう、という流れなわけで、舞台は整っている。
問題は、そこで適切なリスクをとって、資産運用しよう、と日本人が思うかどうか、だ。
金融教育、投資リテラシーが低い日本人には、なかなかこの貯金マインドを変えるのは難しいが、同調圧力も強い日本人。みんながやりだすと、私もやらなきゃ、と動く可能性もある。
国内の株価の動向から今後も目は離せない。
※本記事は投資活動を誘引するものではありません。
※金融商品の購入は個人の責任において行いましょう。